最新鋭の一本歯下駄、ippon blade®︎が開くのは、身体の感覚だけではない。
それは、意識と命のあいだに眠っていた“本来の構造”を呼び覚ます装置でもある。
「立つ」「歩く」「走る」
それは単なる運動ではなく、重力と共に在るための、私たち本来の感覚を呼び覚ます行為かもしれない。
一本歯下駄 ippon blade®︎は、日本古来の修験道や身体文化に宿る叡智と、現代の解剖学・感覚統合・宇宙的なバランス設計を融合した、“一本の軸”を取り戻すための装置である。
この論文では、ippon blade®︎という道具の構造だけでなく、身体の重心や丹田、小脳や間脳の働き、そして天狗や龍・鳳凰といった象徴存在に宿る精神的な軸までを横断しながら、「人はどこに立ち、どこへ向かって歩くのか」を問い直していく。
バランスとは、ただ安定することではない。
揺れながら、感じながら、全体とつながり直すプロセスにこそ、本来の生命のリズムがある。
その感覚の回復が、私たちをもう一度“ひとつの命”へと導いていく。
【目次|Table of Contents】
•序章|身体は「一本の軸」で目覚める
•第1章|カラス天狗と一本歯下駄 空と地をつなぐ存在
•第2章|ippon blade®︎と人体のバランス軸
•第3章|三つの丹田と軸の統合
•第4章|歩くこと、走ること、軸を持つこと
•第5章|ホメオスタシスと宇宙的バランスの再構築
•第6章|覚醒能力の引き出しとレセプター感覚の活性化
•第7章|二項対立構造と二元性の統合
•第8章|龍と鳳凰、そしてカラス天狗の統合
•第9章|軸と重心が導く、意識と身体の再統合
•第10章|ippon blade®︎という革新と未来
•第11章|間脳の目覚めと生命センサーの再起動
•第12章|神仏習合とippon bladeの精神軸
•結章|一本の歯が開く、統合の回路
•あとがき|一本の軸でつながる「神・仏・人」
序章|身体は「一本の軸」で目覚める
人間の身体は、重力という見えない法則の中で生きています。
私たちはその重力と、常に無意識に交信しながら、立ち、歩き、走り、そして生きています。
古来、修験者や武道家は「一本歯下駄」という一点支持の履物を用い、自らの軸を鍛え、自然との共鳴を体現してきました。
その一歩一歩は、身体と精神を繋ぐ修行であり、神仏と大地、天地との“感応の道”でもあったのです。
ippon blade®︎は、この伝統的な智慧をもとに、フィボナッチ数列・黄金比といった宇宙の構造原理を融合させ、現代の解剖学、神経科学、運動生理学に基づいた独自研究によって創造された、新しい“軸の装置”です。
しかし、それは単なるトレーニングギアではありません。
ippon blade®︎は、身体と意識を再統合し、内なる感覚を呼び覚まし、さらには神仏習合に象徴される“二元の統合”を身体で体感するための、現代における「修験の道具」なのです。
本書では、カラス天狗と一本歯下駄の象徴的関係、ippon blade®︎の構造的・精神的な背景、
そして過去・現在・未来を貫く魂の軸としての身体性までを、章立てて丹念に描いていきます。
第1章|カラス天狗と一本歯下駄――空と地をつなぐ存在
1.1 カラス天狗の伝承と一本歯下駄の役割
カラス天狗(烏天狗)は、日本の山岳信仰や修験道において、超常的な導き手として崇められてきた存在です。
黒い羽根、鋭い嘴、一本歯下駄を履き、山を駆け、空を飛ぶ――その姿は、神霊としての威厳と、自然との一体化を象徴しています。
彼らの足元に共通して描かれるのが、一本の歯を持つ特殊な高下駄――一本歯下駄です。
通常の下駄とは異なり、足の中央に一点で支える歯を持つこの履物は、極端なバランス感覚を要求します。
しかし修験者たちにとって、それは単なる履き物ではなく、「身体を使って神性に触れるための道具」でした。
一本歯下駄で歩くとは、自然の力と対話しながら、自らの軸を探り、重心と感覚を研ぎ澄ませる行為です。
天狗のように滑るように歩き、浮いているように進むその感覚は、単なる運動能力ではなく、“重力の哲学”を身体で学ぶ実践でもあったのです。
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1.2 天狗は宇宙からの導き手だったのか?
世界中の神話には、「空を飛ぶ神々」が存在します。
エジプト神話のホルス、インド神話のガルーダ(迦楼羅)、中南米のケツァルコアトル――
彼らはみな、鳥の姿や羽根を持ち、天と地をつなぐ存在として語られてきました。
これらの神々と同様に、カラス天狗もまた単なる妖怪ではなく、古代における「知の運び手」であり、人類に文明や感覚、技術を授けた導き手としての側面を持っていた可能性があります。
時代の流れの中で、天狗は「鼻高天狗」へと変化し、時に渡来人や堕落した修験者の風刺として描かれるようになりました。
しかしその根本には、道祖神であるサルタヒコとも通じる「導きの精神」が宿り続けています。
天狗とは、天と地、神と人のあいだに立つ媒介者であり、その象徴である一本歯下駄は、“重力と感覚をつなぐ訓練装置”として受け継がれてきたのです。
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1.3 現代に受け継がれた一本歯の叡智
この伝統と象徴性を、現代の身体と感覚に再設計し、実用化したものがippon blade®︎です。
単なる形の復刻ではなく、フィボナッチ比や骨格構造の最適化、現代人の感覚の喪失に対応する“再学習ツール”として設計されたippon blade®︎は、天狗が持っていた叡智――「重力と共存するバランス」「身体と意識の再統合」――を、誰もが体験できる形で蘇らせています。
一本歯構造は、民俗の中に眠る象徴でありながら、現代社会が失った「感覚の回復」への鍵でもあるのです。
それは、単に昔を懐かしむのではなく、未来に向けて「人間の根本を再起動するための身体哲学」でもあります。
第2章|ippon blade®︎と人体のバランス軸
2.1 一本歯下駄と黄金比の融合――ippon blade®︎の誕生
ippon blade®︎は、古来の一本歯下駄の精神性と象徴性を継承しながらも、構造においてはまったく新しい進化を遂げた道具です。
その設計には、宇宙や自然界に内在する“調和の原理”であるフィボナッチ数列や黄金比(1:1.618)が反映されています。
この黄金比は、銀河の渦巻き、植物の葉の配置、貝の螺旋、人間の骨格比率にまで及ぶ「美と安定の普遍的法則」です。
ippon blade®︎では、歯の位置・高さ・長さに至るまで、この比率に基づいて設計されています。
さらに、足圧分布・神経フィードバック・地面反力の伝導など、現代人の骨格バランスや動作パターンに合わせた精密な調整がなされています。
その結果、ippon blade®︎は、トレーニングツールでありながら、日常生活でも使える“身体調律装置”となったのです。
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2.2 ippon blade®︎がもたらす「バランスの再構築」
バランスとは、単なる感覚ではなく、身体の構造と力の流れが整ってはじめて成立するものです。
ippon blade®︎は、以下の重要な骨格構造に着目して設計されています。
•距骨を含む足根骨の中心:足裏から身体に伝わる重力の通り道であり、全身バランスの起点。
ippon blade®︎の歯は、足根骨の真下に配置され、自然な姿勢と動きが引き出されます。
•仙骨:骨盤の中心であり、背骨と下肢の橋渡しを担う構造。ippon blade®︎の使用により、仙骨の角度が微細に調整され、全身の姿勢が整います。
•胸郭(胸骨・肋椎関節・胸鎖関節):呼吸と感情の調和に関係する部位。立位の安定化により、呼吸が深まり、自律神経にも良い影響を与えます。
•蝶形骨:頭蓋骨の中心にあり、感覚の統合とホルモン分泌に関わる。足裏からの微細なバランス刺激が、この部位にも間接的に作用し、全体的な神経調整が促されます。
これらの部位が連動することで、「構造的に整ったバランス」が自然と回復されるのです。
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2.3 インナーマッスルの活性化と神経伝達の最適化
ippon blade®︎の最大の特徴は、「身体を使おうとしなくても、身体が使われる」ことにあります。
一点で支える構造により、立っているだけでもインナーマッスル(深層筋)が常に働き続け、
外側の筋力に頼らない「芯からの動き」が再教育されていきます。
特に注目すべきは以下の点です:
•腸腰筋(大腰筋+腸骨筋)の活性化:足を前に出す際に自然と使われ、体幹の安定と推進力を同時に担います。
•足裏の神経フィードバック:独特な接地感により、足底のメカノレセプターが刺激され、地面の情報がダイレクトに脳へ伝わるようになります。
•原始反射・姿勢反射の統合:乳幼児期の本能的な反応パターンが再び活性化され、「無意識に整う身体感覚」が戻ってきます。
ippon blade®︎は、単なる筋トレではありません。
それは、身体と神経の再学習を促す“知的で感覚的な装置”なのです。
第3章|三つの丹田と軸の統合
東洋の身体観において、エネルギーの中心として重視されるのが「丹田」です。
丹田とは単一の部位ではなく、主に三つの階層に分かれ、それぞれが心身の異なる側面と深く結びついています。
ippon blade®︎で立ち、歩くという行為は、これら三つの丹田を同時に意識させるだけでなく、それらを一本の軸として自然に統合する身体感覚を導き出します。
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3.1 下丹田(へその下)――重心と生命力の源泉
下丹田は、いわゆる「身体の中心」とされる場所であり、武道や舞踊、ヨガ、気功などでも最も基本とされるエネルギー中枢です。
物理的には骨盤の内側、腸腰筋と骨盤底筋の周辺に位置しており、重心の安定、持久力、瞬発力と深く関係しています。
ippon blade®︎に立つと、この下丹田を意識せざるを得ません。
なぜなら、足元が一点で支えられているため、無意識に腹圧と体幹の安定が求められ、自然と深層筋群が活性化するからです。
軸が通り、下腹が据わる感覚は、まさに「地に足がつく」実感でもあります。
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3.2 中丹田(胸の中心)――感情と呼吸、共感の領域
中丹田は、胸骨の奥、心臓の周辺に対応するエリアで、呼吸、感情、人とのつながりに関係します。
この領域が緊張していると、呼吸は浅くなり、感情も不安定になります。
逆に、胸郭が柔らかく、肩甲骨が解放されていれば、呼吸は深まり、情緒も整っていきます。
ippon blade®︎で正しく立ち、歩くことで、自然と胸が開き、呼吸の質が変化していきます。
呼吸が整うと、自律神経のバランスが安定し、安心感と落ち着きが生まれます。
中丹田の目覚めは、自他の区別を超えて、共感と調和を取り戻す感覚につながります。
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3.3 上丹田(眉間から頭蓋の中心)――意識と直感、統合的知性
上丹田は、いわゆる「第三の目」と呼ばれる位置であり、松果体、視床下部、脳下垂体といった、意識と内分泌の中枢に対応する領域です。
直感、空間認識、創造性、俯瞰的な視点――
これらは、上丹田が開かれていることで発揮される能力です。
ippon blade®︎に乗ると、不安定な足元を支えるために、全身の感覚が一体となって動き始めます。
意識が局所的に偏ると、すぐに軸を失います。
そのため、「全体を同時に感じる」ような、内的ネットワークが自然に再起動されていきます。
その状態は、思考ではなく“全身で気づく”感覚です。
これこそが、上丹田が開き始めているサインなのです。
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3.4 三つの丹田を結ぶ一本の軸
下・中・上の三つの丹田は、それぞれが独立して働くのではなく、連動し合いながら統合されていくことが重要です。
ippon blade®︎の構造は、これら三点を一直線に結ぶように設計されています。
そのため、自然に「下に根ざし、真ん中が開き、頭が静まる」という三位一体の身体感覚が生まれてきます。
これは単なる姿勢や筋肉の調整ではなく、身体・感情・意識の統合です。
情報過多の現代において、多くの人は思考に偏り、感情を抑圧し、身体とのつながりを見失っています。
その分断された三層構造をひとつにつなぎ直す道具こそが、ippon blade®︎なのです。
身体の奥から「ひとつながりの人間」が立ち上がる。
それは、感覚の再統合であり、魂の軸を取り戻す一歩でもあります。
第4章|歩くこと、走ること、軸を持つこと
私たちは「歩く」「走る」という行為を、日常の当たり前として捉えがちです。
しかし本来、それは極めて高度で、繊細で、そして“意識的な進化”の鍵となる身体運動です。
ippon blade®︎を履いて歩くという行為は、単なる運動ではありません。
そこには、重力と構造、反射と神経、意識と無意識が絡み合う、深い学びのプロセスがあります。
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4.1 歩行とは、重力との対話である
人間の歩行は、単なる前進ではありません。
それは、重心を支持基底面内に保ちつつ、軸を移動させ続けるという、極めて精妙なバランスの上に成り立っています。
つまり歩行とは、「倒れそうで倒れない」という不安定さを制御する運動ではなく、重心と軸の位置関係を微細に調整し続ける、動的な“連続する再調整”の連なりです。
このとき、骨格構造、筋連動、神経反射、視覚、前庭感覚などが絶えず協調して働いています。
ippon blade®︎は、この繊細な連携を顕在化させ、普段は意識されにくい身体の動きの質を浮かび上がらせます。
わずかな集中の乱れや重心のずれが、そのままバランスの崩れとして現れます。
逆に、静かに耳を澄ませるように立ち、感覚を開いていくことで、身体は自然と最適な軌道を探し出します。
歩くことが、学びそのものである。
ippon blade®︎は、そう気づかせてくれる装置です。
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4.2 走ることは、意識を覚醒させる
ippon blade®︎で走るとき、歩行とは全く異なる次元の身体感覚が現れます。
前に進む推進力は、重心移動と地面からの反力との“正確な同期”によって生まれます。
このとき身体は、「浮いている」ような感覚になります。
それは「わずかにバランスを崩して進む」のではなく、「重力と反力の流れに乗り、持ち上げられ、前へ導かれる」ような状態です。
この感覚に至ると、意識は極度に静まり、思考は停止し、ただ“在る”という感覚が広がります。
これはスポーツではなく、瞑想にも似た、身体と意識の一致によって訪れる“覚醒状態”とも言えます。
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4.3 ランニングと瞑想のあいだにあるもの
ippon blade®︎でのランニングは、フィジカルな挑戦であると同時に、内的な旅でもあります。
私がippon blade®︎で100kmを完走したとき、
身体は限界を迎えながらも、ある瞬間から“ただ動き続ける”状態に入りました。
呼吸は一定に保たれ、景色は流れ、
「走っている自分」と「ただそこに在る感覚」が一致していく。
それは、歩く瞑想であり、動きの中の覚醒であり、意識の再構築そのものでした。
この体験は、特別な人だけのものではありません。
ペースや距離は関係なく、誰にでも開かれた、身体と魂の再接続のプロセスです。
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4.4 軸を持って動くということ
ippon blade®︎は、常にこう問いかけてきます。
今、どこに立っているのか。
どこへ向かおうとしているのか。
何に支えられているのか。
この問いに対する答えは、思考ではなく感覚の中にあります。
足裏からの反力、筋肉の緊張と弛緩、呼吸のリズム、視界の安定――
それらすべてが「今ここ」に生きる身体の情報です。
立つこと、歩くこと、走ること。
それは単なる運動ではなく、「どう生きるか」という問いそのものです。
ippon blade®︎を履いて動くことは、動きながら、自分の軸と再び出会い、生きる方向性を“身体で思い出す”ことなのです。
第5章|ホメオスタシスと宇宙的バランスの再構築
人間の身体には、本来「整おうとする力」が備わっています。
それは自律神経や内分泌系、免疫系を通じて働き続ける、生体の恒常性維持機能――
つまりホメオスタシスです。
ippon blade®︎は、このホメオスタシスという“動的なバランス回路”を、身体感覚を通じて再び目覚めさせていく装置でもあります。
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5.1 ホメオスタシスとは何か?
ホメオスタシスとは、生体が外部環境の変化に適応しながらも、内部の状態を一定に保とうとする働きのことです。
たとえば、
・体温調節
・血圧や脈拍の維持
・呼吸リズム
・ホルモンの分泌調整
・免疫反応や代謝バランス
これらはすべて、絶え間ない調整と修正のプロセスによって支えられています。
そしてこの仕組みは、人間だけでなく、動植物、微生物、さらには地球や宇宙にも当てはまるものです。
星の軌道、季節の循環、潮の満ち引き、細胞の分裂――
あらゆる存在が、「変化し続けながら、全体の調和を保つ」という原理に則って生きているのです。
ippon blade®︎は、このホメオスタシスを身体で“感じる”ことを可能にします。
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5.2 身体と宇宙に共通する“揺らぎのバランス”
ホメオスタシスとは、決して「静止」ではありません。
むしろそこには、微細な“揺らぎ”と“変化”が内包されています。
人間の身体もまた、常にわずかな振動と揺れを繰り返しながら、バランスを取り続けています。
脳波、心拍、呼吸、姿勢――
これらはすべて、「止まらない安定」を前提に成り立っているのです。
ippon blade®︎に立つと、この微細な揺らぎが意識の表面に現れます。
一点支持の構造では、どんなに静かに立っていても、常に小さな揺れが生じます。
その揺れを、筋肉、骨格、神経が連動して絶えず調整し続けます。
この時、身体は「不安定を受け入れながら、安定を生み出す」という、生命そのものの働きを体現しているのです。
この感覚は、地球の大気や引力のバランスとも、宇宙のリズムとも共鳴しています。
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5.3 現代人のバランス崩壊とippon blade®︎の役割
現代人の生活は、感覚の鈍化と環境の過剰な情報によって、ホメオスタシスのバランスが乱れやすくなっています。
・姿勢の崩れ
・自律神経の乱れ
・呼吸の浅さ
・睡眠障害や集中力の低下
・筋骨格系のアンバランス
こうした慢性的な不調の多くは、身体の調整機能がうまく働かなくなっている結果です。
ippon blade®︎は、これらのバランス崩壊に対して、身体の内側から“修復の感覚”を呼び覚まします。
・足裏からの正確な情報入力により神経系が再起動し
・重心と姿勢が自然に調整され
・呼吸と筋連動が一致し
・感覚全体が統合されていく
このような調整は、特別な訓練ではなく、日常の中で起こります。
ippon blade®︎は、身体が“自然な状態に戻る力”を信頼し、それを静かに促す道具なのです。
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5.4 ホメオスタシスと文明の再構築
視点を身体から社会へと広げてみると、同じような現象が見えてきます。
社会もまた、バランスによって成り立っています。
経済、教育、技術、政治、自然――
これらが変化しながらも調和し続けることで、文明は持続可能となります。
しかし今、世界はさまざまな分断と緊張の中にあります。
その根本には、「個人の調和の喪失」があるのではないでしょうか。
自分の感覚に気づかない。
自分の軸を見失う。
呼吸が浅く、意識が外にばかり向く。
この状態では、社会全体もまた、不安定で揺れやすくなってしまいます。
ippon blade®︎は、こうした文明のバランス崩壊に対して、一人ひとりが“身体を通じて調和を取り戻す”というアプローチを提案しています。
重力の中で、生命は等しく揺れながら、均衡を求めて生きている。
そのシンプルで力強い事実を、再び体感することで、個人の回復から社会の再調律へとつながる道が開かれていくのです。
第6章|覚醒能力の引き出しとレセプター感覚の活性化
ippon blade®︎の構造は、ただ身体のバランスを整えるだけのものではありません。
それは、人間が本来持っていた“感覚能力”や“反射の知性”を再び目覚めさせ、眠っていた神経ネットワークを呼び起こすために設計された装置でもあります。
この章では、ippon blade®︎によって活性化される受容体(レセプター)、神経系、そして意識の変化について掘り下げていきます。
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6.1 バランスレセプターと身体の再教育
人間の身体には、重力や傾き、動きの変化を感知する精密なセンサーが備わっています。
それが「レセプター(受容体)」と呼ばれる仕組みです。
代表的なものには以下があります。
・足裏のメカノレセプター
地面の硬さ、傾斜、圧力変化を微細に感知します。
・関節内の固有受容器
関節の位置や動きの角度を把握し、姿勢や運動制御に関与します。
・内耳の前庭器官
傾き、回転、加速度を感知し、平衡感覚を支える重要なセンサーです。
ippon blade®︎は、このレセプター群を一気に目覚めさせます。
一点支持による極めて不安定な構造により、
身体は常に微細な変化を感知し、瞬時に反応しようと働き始めます。
その結果、普段は使われていなかった感覚神経系が動き出し、全身の神経と筋肉の協調が“統合的に再学習”されていくのです。
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6.2 原始反射、姿勢反射、脊髄反射の再統合
私たちは成長の中で、さまざまな「反射」を身につけてきました。
・原始反射
乳児期に見られる、刺激に対する本能的な反応。歩行反射や把握反射など。
・姿勢反射
重力に対して姿勢を保持しようとする無意識の動き。倒れそうになったときの再調整など。
・脊髄反射
脳を介さずに脊髄で処理される、高速の運動反応。踏ん張りや瞬間的な動きに関わります。
現代人の多くは、これらの反射系が未発達または機能不全のまま生活していることがあります。
原因は、運動不足、感覚遮断、情報過多、または過度な意識の偏りです。
ippon blade®︎に立ち、歩くことで、これらの反射が自然に呼び起こされ、再び統合されていきます。
転びそうになったときに素早く体幹が反応する、
一歩一歩が自動的に調整されていく――
これは「身体の本能」が目覚めている証です。
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6.3 自律神経の調整とエネルギーの最適化
ippon blade®︎は、自律神経系にも働きかけます。
自律神経とは、活動を司る交感神経と、回復を促す副交感神経のバランスによって、身体の内側を整える仕組みです。
現代では交感神経が優位になりすぎる傾向があり、リラックスできない、眠れない、回復できないという状態が蔓延しています。
ippon blade®︎で立つ、歩くという微細な運動は、
筋肉や骨格を適度に刺激しつつ、内側に意識を向ける動きでもあります。
・足裏からの反射区刺激による内臓活性
・呼吸の深まりによる副交感神経の優位化
・身体の動きと精神状態の同期
これらの作用により、自律神経のバランスが整っていきます。
それは、頭でコントロールするのではなく、感覚を信じて身体に任せることで起こる“自然な最適化”です。
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6.4 松果体と小脳の活性化――意識の明晰化
ippon blade®︎でのバランス運動は、さらに深い次元での神経中枢にも影響を与えています。
・松果体
脳の中心に位置し、概日リズム(体内時計)やホルモン分泌に関わる。古くは「第三の目」とも言われる直感と感知の中枢。
・小脳
運動制御の役割だけでなく、最近では感情や直感、判断力にも関与すると考えられている部位。
足裏からの感覚、骨格の揺らぎ、重力とのやりとりを通じて、これらの中枢が活性化されていくとき、思考を超えた“感覚の明晰さ”が立ち上がります。
判断を超えた直感。
タイミングの妙。
感覚で世界を捉えるという知性。
ippon blade®︎は、考えるのではなく“感じてわかる”身体の知性を思い出すための、静かな、しかし深い再起動のスイッチとなっているのです。
第7章|二項対立構造と二元性の統合
現代の社会構造や思考体系は、多くの場合「分けること」によって成り立っています。
善と悪、成功と失敗、理性と感情、身体と精神、自然と人工。
これらはすべて、相反するものとして分類され、それぞれに「正しさ」や「優劣」が貼りつけられてきました。
しかし、ippon blade®︎が示しているのは、そうした対立の“あいだ”に存在する統合の視点です。
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7.1 分離する社会と、失われた統合感覚
産業化、専門分化、情報の細分化。
現代社会は進歩するほどに、分離の傾向を強めてきました。
教育も仕事も医療も、細かなパーツに分けて分析・管理され、人間の在り方そのものも、部分ごとに評価されるようになりました。
しかし人間の身体は、そもそも“ひとつの全体”です。
筋肉、骨、神経、内臓、感情、意識――
これらはバラバラに存在しているのではなく、連動しながら働いています。
ippon blade®︎は、バランスというシンプルな体験を通じて、その「全体性の感覚」を取り戻すきっかけを与えてくれます。
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7.2 一本歯という構造が示すバランスの本質
ippon blade®︎の歯は、一点しかありません。
だからこそ、立つためには常に「中心」と「傾き」を同時に感じている必要があります。
静止と動作
安定と揺らぎ
外へ向かう遠心力と、内に戻る求心力
この相反する力のあいだに生まれる緊張と調整が、「動的な安定」を生み出します。
一本歯という構造は、表面的には不安定で奇抜に見えますが、実は最も中庸で合理的なバランスの象徴でもあるのです。
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7.3 陰陽、左右、理性と直感――二元の先にある統合の感覚
東洋思想において、陰と陽は対立するものではなく、循環と補完の関係にあります。
日と夜
吸う息と吐く息
交感神経と副交感神経
左足と右足
一方がなければ、もう一方も成立しません。
そして、そのあいだには常に「動的な統合」が存在しています。
ippon blade®︎は、歩くというシンプルな運動の中に、こうした統合の感覚を体験させてくれます。
左右の足に均等に重心を乗せることで、身体のねじれが整い
呼吸と歩行のリズムが一致することで、意識が静まり
微細な揺れに気づくことで、感覚が研ぎ澄まされていく
思考ではなく、身体が知っている感覚。
それこそが、ippon blade®︎が伝えている統合のメッセージです。
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7.4 結びと開き、収縮と拡張――生命のリズムを取り戻す
歩くという動作は、足を交互に出す、リズム運動です。
筋肉は収縮と弛緩を繰り返し、呼吸も吸って吐いてを繰り返す。
身体全体が、結びと開き、内と外、止まりと動きを絶えず交差させながら進んでいきます。
この生命のリズムが整っているとき、私たちは自然と調和し、世界とのつながりを感じることができます。
ippon blade®︎で歩くと、このリズムが顕在化します。
それは、社会的な時間や目標とは異なる、“いのちのテンポ”です。
そこには、急がず、止まらず、ただ在るという感覚が宿ります。
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7.5 二元性を超えて、一本の軸へ
最終的にippon blade®︎が示しているのは、「両方の真実を理解したうえで、自分の軸を見出す」という姿勢です。
善と悪、正と誤、陽と陰。
それぞれに意味があり、それぞれに役割がある。
そのどちらかに偏ることなく、あいだに立つこと。
それが「軸を持つ」ということです。
ippon blade®︎は、一本の歯によって立ち、揺れ、整うなかで、身体に宿る“あいだの智慧”を思い出させてくれます。
揺れてもいい。
傾いてもいい。
大切なのは、どこに戻ってこれるかということ。
そしてその帰る場所が、「自分の真ん中」であること。
その一点にこそ、すべての統合が宿るのです。
第8章|龍と鳳凰、そしてカラス天狗の統合
東洋の神話や象徴体系において、「龍」と「鳳凰」はしばしば対を成す存在として登場します。
龍は水、地、陰、潜在性、蛇行を象徴し、
鳳凰は火、天、陽、顕在性、飛翔を象徴します。
この二つはときに対立し、ときに調和しながら、生命原理の両極として描かれてきました。
そして、その両方の要素を併せ持つ存在こそが、カラス天狗であり、現代においてその象徴性を再構築した道具が、ippon blade®︎なのです。
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8.1 龍と鳳凰――陰陽二つの生命原理
龍は地を這い、水を司り、雲を呼び、雷を鳴らす存在です。
その姿はうねり、旋回し、常に変化と再生の力を内包しています。
一方、鳳凰は天を飛び、火をまとい、光をもたらす象徴です。
その羽ばたきはしなやかで優美、天の意志を伝える使者とされてきました。
地と天、陰と陽、潜在と顕在。
これらは対立ではなく、循環と補完の関係にあります。
そしてそのどちらも、調和を必要とする“いのちの原理”そのものです。
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8.2 カラス天狗――天と地を行き来する者
カラス天狗は、山に棲み、大地を駆け、風を読み、空を翔ける存在です。
一本歯下駄を履き、黒い羽根を広げ、鋭い感覚を研ぎ澄ませて動くその姿は、まさに龍と鳳凰の要素を併せ持つ“媒介的存在”といえます。
陰と陽、地と天、静と動のあいだを自在に行き来し、調和と変化の中間に立つ者。
カラス天狗は、導き手であると同時に、統合の象徴でもあります。
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8.3 一本歯下駄という「統合装置」
一本歯下駄は、ただ奇抜な履物ではありません。
その構造には、極めて象徴的かつ論理的な意味が宿っています。
・地に接する一点から重力を受け取り
・上半身は空に向かって伸びていく
・下半身は沈静と安定を担い、上半身は自由と拡張を導く
この一連の流れは、まさに龍と鳳凰のエネルギーの融合であり、天地の力が一点で交差する装置でもあるのです。
そして、ippon blade®︎はその構造を現代に最適化し、身体で体感できる“統合の装置”として再設計された道具なのです。
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8.4 分離ではなく、形態の違いとして捉える
私たちはしばしば、物事を対立として捉えがちです。
龍と鳳凰
カラス天狗と鼻高天狗
陰と陽
合理と感性
しかし、これらは敵対するものではなく、
“時間や場面に応じて現れる形態の違い”にすぎません。
たとえば、天狗の中でカラス天狗は導き手として、
鼻高天狗は傲慢さへの戒めとして描かれてきました。
けれどその両方が、私たちに必要な学びを与えているのです。
違いは否定するものではなく、受け入れ、超えていくもの。
そのプロセスこそが、「統合」です。
ippon blade®︎は、その一歩を足裏から始めるための道具として、分離を越えた感覚を育んでいきます。
第9章|軸と重心が導く、意識と身体の再統合
身体を動かすということは、単なる筋力や関節の運動だけではありません。
それは同時に、「どこに意識を置くか」「何を感じ取っているか」という、内外の感覚の処理と選択のプロセスでもあります。
ippon blade®︎は、現代人が失いがちな「意識と身体の統合」を取り戻すための体感装置です。
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9.1 重心の位置が意識を変える
多くの人は無意識のうちに、重心が前に倒れていたり、後ろに引けていたりします。
いわゆる反り腰やおよび腰と呼ばれる姿勢は、その典型例です。
このとき身体には、崩れた重心を支えるための“力み”が生まれ、その緊張は思考や感情の状態にも影響します。
つまり、身体の構造の崩れは、そのまま意識の不安定さにつながるのです。
ippon blade®︎は、一本の歯で立つという構造上、
重心がズレればそのままバランスを崩すため、
自然と「正しい重心の位置」に戻る動きが促されます。
このプロセスの中で、人は「安定した身体感覚」を再学習し、その上に意識を“静かに置く”ことができるようになっていきます。
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9.2 床反力を「使う」身体へ
ippon blade®︎を履いて動くと、地面から返ってくる“床反力”が、より明確に身体へと伝わってきます。
この反力を単に押し返すのではなく、上手に“使う”ことで、身体はより軽やかに、無駄なく動くようになります。
・ほんのわずかに重心を前に移動させると、その流れに反力が乗り、推進力が生まれる
・片足立ちで軸を整えると、反力が上方へ流れ、姿勢が引き上がる
・重心が正しく乗ることで、歩行が滑るように軽くなる
このような感覚は、考えて操作するものではありません。
むしろ、感覚を開き、身体に任せることで初めて現れるものです。
ippon blade®︎は、思考による操作を手放し、感覚の主導権を取り戻す装置なのです。
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9.3 意識と身体の“相互フィードバック”
ippon blade®︎での動きは、常に「意識の質」によって変化します。
恐れがあると身体は緊張し、バランスを失います。
集中が乱れると歯の軸がずれ、動きに無駄が生まれます。
呼吸が浅いと、重心が安定せず、身体全体が揺れます。
しかし、逆もまた同じです。
呼吸が深まれば身体はゆるみ、安心感が生まれます。
重心が整えば思考が静まり、判断が明晰になります。
身体が自由に動けば、意識も軽やかになり、創造性が高まります。
ippon blade®︎は、この「身体と意識の相互フィードバック」の回路を再起動させ、両者がひとつに統合されていく感覚を導いてくれます。
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9.4 感覚の回復=自分自身の回復
現代人の多くは、感覚を外に向けすぎるあまり、
自分の内側にある微細な感覚に気づく力を失っています。
・空腹や満腹の感覚
・疲労や過剰の感覚
・緊張や安心の感覚
・感情や直感の揺らぎ
ippon blade®︎で歩き、立つことで、これらの微細な“内なる声”が少しずつ戻ってきます。
今、どこに立っているのか。
どう感じているのか。
何を必要としているのか。
その答えは、外から与えられるのではなく、
自分の中にある感覚によって教えられるものです。
そして、それに気づけるようになることこそが、
本当の意味での「自分自身の回復」なのです。
ippon blade®︎は、重力という共通の条件のもとに、
誰もが“内なる自分”とつながるための道を静かに開いてくれるのです。
第10章|ippon blade®︎という革新と未来
ippon blade®︎は、伝統と現代、身体と精神、自然と科学の架け橋として生まれた道具です。
一本の歯という極めてシンプルな構造の中に、これまで分断されてきたものを再統合するための可能性が宿っています。
それは単なるトレーニング器具でも、伝統文化の復刻でもありません。
この章では、ippon blade®︎が持つ革新性と、未来に向けた開かれたビジョンについて掘り下げていきます。
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10.1 科学と自然の融合としての道具
多くのスポーツ用具や健康器具は、特定のパフォーマンス向上や筋肉の強化に焦点を当てています。
しかし、ippon blade®︎は「全体性」を主題とした設計思想を持っています。
そこには三つの柱があります。
・日本の伝統文化――修験道、一本歯下駄、身体観
・自然界の普遍的調和――フィボナッチ数列、黄金比、重力との共生
・現代科学の知見――解剖学、神経科学、運動生理学
つまり、ippon blade®︎はツールであると同時に、「哲学」を内包した道具なのです。
使うことで、身体そのものに宿る自然の原理と向き合い、感覚を通じてその智慧を思い出す装置――それがippon blade®︎です。
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10.2 社会に広がる新しい調和のかたち
ippon blade®︎は、特定の人だけのための道具ではありません。
子どもから高齢者、アスリートから日常生活者まで、誰もが自分の身体と再接続するために使うことができます。
すでに、さまざまな現場で活用されています。
・ハーフマラソンやフルマラソン、100km以上のウルトラマラソンへの出場と完走
・高齢者の転倒予防やリハビリ
・学校やジムでの姿勢改善、軸づくりの教材
・武道、舞踊、演劇など身体表現のための基礎訓練
・瞑想、呼吸法、精神安定のための補助ツール
ippon blade®︎は、「誰もが自分自身に戻る」ための共通言語として、今後さらに社会の中に溶け込んでいく可能性を秘めています。
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10.3 個人の再統合から社会全体の調律へ
世界における問題――環境破壊、分断、病、不安――
それらはすべて「外の問題」に見えますが、実は「内の分離」が原因であることが少なくありません。
・自分の身体を感じない
・感情に気づかない
・違和感を無視する
・自分が本当は何をしたいかがわからない
このような“内なる分離”が、やがて社会の分断や暴力、疲弊として現れてくるのです。
ippon blade®︎は、こうした状況に対して極めて静かな提案をしています。
たった一点に立つという選択。
足裏の感覚を思い出し、呼吸を整え、自分の軸を取り戻すという行為。
それは小さなことのようでいて、実は、外側の世界を変える最も本質的な一歩です。
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10.4 未来へ開かれたバランスのかたち
ippon blade®︎は、完成された商品ではありません。
それは進化の途中にある、“生命的なプロセス”です。
使う人の身体が変われば、道具の意味も変化します。
その変化を受け入れながら、新たな動き方、感じ方、在り方が生まれていく。
つまり、ippon blade®︎は「道具と人間の共進化」を前提にした設計なのです。
未来に必要なのは、完成された正解ではありません。
それぞれの人が、それぞれの身体で問いを持ち続けることです。
ippon blade®︎は、その問いに応えるための、最もシンプルで深い“対話の道具”です。
第11章|間脳の目覚めと生命センサーの再起動
現代人は、地球という重力場の中で生きながら、その重力と調和して生きるための「感覚器官」を徐々に失いつつあります。
その原因のひとつが、「間脳」の機能低下です。
ippon blade®︎は、この深部の感覚中枢を静かに刺激し、身体の奥底から生命のバランスを取り戻すための装置でもあります。
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11.1 間脳とは何か?
間脳は、脳幹と大脳をつなぐ重要な中枢領域で、以下のような器官で構成されています。
・視床
感覚情報の中継地点。身体中から集められた感覚刺激を大脳へ送るゲートの役割。
・視床下部
自律神経と本能行動の統合中枢。体温調節、食欲、性、情動、内臓反応などを司ります。
・脳下垂体
ホルモン分泌の司令塔。身体の恒常性と成長に関わる重要なエンドクライン中枢。
・松果体
概日リズム(体内時計)を調整する器官であり、光と闇の情報を受け取り、意識の変化にも関係します。
これらすべてが連動しながら、「生きることそのもののバランス」を支えているのです。
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11.2 現代人のセンサーはなぜ狂ったのか?
間脳は、人間の内側にある“生命センサー”とも言える働きを持っています。
実際、私たちの身体には、スマートフォンにも搭載されているような「ジャイロセンサー」や「加速度センサー」と類似した機能が存在します。
・ジャイロセンサー
傾き、角度、回転速度を感知する能力
・加速度センサー
動き出しや減速、重力方向の変化を感知する能力
これらは主に前庭器官や深部感覚(固有受容器)、筋膜の張力などによって支えられていますが、最終的にそれらの情報を統合しているのが間脳なのです。
しかし現代では、情報の過多、運動不足、環境の人工化、化学物質の影響などによって、このセンサー機能が低下しています。
その結果、以下のような状態が生じます。
・前傾姿勢(攻撃性、過剰な外向き)
・後傾姿勢(無気力、内向的防衛)
・左右のバランス崩れ(偏りと思考の固定)
これは単なる姿勢の問題ではなく、
地球と共鳴するための“生命の感覚”そのものが失われていることを示しています。
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11.3 遠心力と求心力――その間にある軸
地球は自転しながら、重力と遠心力のバランスによって生命を維持しています。
この自然のエネルギーの流れは、人間の身体の中にも投影されています。
外に向かう力――遠心性
内に戻る力――求心性
この両方のリズムが働いて初めて、身体は躍動し、感情は生き生きとし、意識は明晰になります。
そして、この両極のあいだで絶えず回転を維持するために必要なのが「軸」です。
地球における地軸のように、わずかに傾いていながらも、ぶれることなく回転し続けるその中心点。
人間の軸とは、物理的には仙骨から頭頂を貫く一本の線であり、エネルギー的には三つの丹田を貫く感覚でもあります。
ippon blade®︎は、この軸を身体の中心で再認識させるための実践装置なのです。
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11.4 一本歯下駄は“地球の軸”に同調する装置
ippon blade®︎の歯は、距骨を含む足根骨の中心に一致するように設計されています。
この一点に重力を集約し、床反力を正確に通すことで、全身の軸を貫く感覚が生まれます。
・立つことで“傾きと回転”を感知する力が高まり
・歩くことで“加速度と方向性”に対する感受性が戻り
・感じることで“生命そのもののセンサー”が再起動する
このようにして、間脳は身体とのつながりを回復し始めます。
それは、上からの命令ではなく、下からの気づきによって目覚めていく機能です。
一本歯の一点で感じ取る振動、反力、揺れ――
それらすべてが、生命そのもののリズムと再接続する“起点”となるのです。
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11.5 人類の再統合へ向けて
今、世界は分断と不安に揺れています。
その原因は、社会構造や経済のシステムだけではなく、一人ひとりの内側――つまり「身体と自然との断絶」にあるのではないでしょうか。
ippon blade®︎は、その断絶を修復するための装置です。
しかも、頭で理解するのではなく、足裏で感じるという最も根源的な方法で。
意識と感覚
思考と直感
身体と自然
これらを再びひとつにつなぎ直すこと。
それは、大きな理論や思想ではなく、
日々の「立つ」「歩く」という行為の中から始まっていきます。
そしてその一歩が、人類全体の感覚回路を再統合するための扉となるのです。
第12章|神仏習合とippon bladeの精神軸
日本という国は、世界でも稀に見る“二元を和合する文化”を育んできました。
神と仏、陰と陽、自然と人間――これらを単に対立させるのではなく、重ね合わせ、融合させながら一つの美意識へと昇華してきた歴史があります。
この文化的遺伝子の核心にあるのが「神仏習合」という思想です。
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12.1 神仏習合という統合の智慧
神仏習合とは、人間の根本にある自然信仰心に、日本古来の神道と、6世紀以降に渡来した仏教とが、相互に溶け合い、補完し合いながら成立した信仰形態です。
山を神と見立て、そこに仏の智慧が降りると捉える。
神はこの世に生きるための根源力、仏は悟りと解脱の象徴。
これらを「一方を否定して他を選ぶ」のではなく、「両方の本質を受け取り、一つに融合する」姿勢は、日本文化に深く根ざす“統合の精神”の現れです。
ippon bladeは、まさにこの神仏習合の精神を、身体的な装置として現代に再構築したものです。
一本の歯で立つという構造は、天と地、精神と肉体、伝統と革新を“分ける”のではなく“繋ぐ”ことを目的としています。
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12.2 修験道と蔵王権現の三位一体の象徴
日本の神仏習合を象徴する最も重要な存在の一つが「修験道」です。
山に入り、自然と一体化し、神仏と交感するこの実践体系の本尊とされるのが「蔵王権現」――
この存在は、以下の三尊を統合した神仏です:
•弥勒菩薩(未来)
•千手観音(現在)
•釈迦牟尼(過去)
つまり、蔵王権現は「時間を超えた三位一体の導き手」であり、修験者たちはこの存在を通して、自らの“魂の道”を歩んできました。
ここで重要なのは、ippon bladeの製品群が、この三尊の名をそれぞれ象徴しているという事実です。
•ippon blade 369(MIROKU) → 弥勒菩薩
•ippon blade 1000(ZEN) → 千手観音
•ippon blade ∞ muni → 釈迦牟尼
これらは単なるネーミングではなく、神仏習合の構造を、現代的な形で身体に体現するための“象徴設計”です。
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12.3 一本歯は、対立ではなく「統合」そのもの
一本歯構造の中には、「どちらかに偏る」のではなく「どちらも担う」という原理が込められています。
・身体と精神
・神と仏
・陰と陽
・理性と感性
・個と全体
・過去と未来
これらを一つに“貫く”ものが、ippon bladeの「軸」であり、それを支える一点の歯が、あらゆる相反するものを超えて「今ここ」に立たせてくれるのです。
つまりippon bladeとは、“統合の身体装置”であり、神仏習合の精神をこの現代に、そして身体に“感じさせる”ための実践そのものなのです。
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12.4 日本発・統合の叡智を世界へ
この統合の精神は、今、世界がもっとも必要としているものではないでしょうか。
宗教対立、思想の分断、民族の違い――それらはすべて、「どちらか」を選ぼうとする思考の罠から生まれています。
ippon bladeは、思想でそれを超えるのではなく、“感覚”と“構造”でそれを超えるツールです。
一本歯で立つことで、人は自然と両足に重心を乗せ、心身の中心に軸を戻し、左右差を超えて“中庸”に立ち返ります。
それはまさに、神と仏のどちらでもなく、その両方に宿る「ひとつの命」としての感覚です。
日本に脈々と流れる神仏習合の叡智は、ippon bladeという道具を通じて、これから世界へと静かに広がっていくことでしょう。
そしてそれは、思想を押し付けることではなく、「重力の下で共に立つ」ことから始まる、真の調和の道なのです。
結章|一本の歯が開く、生命の感覚回路
ippon blade®︎は、ただの一本歯下駄ではありません。
そして、よく似た構造を持つ他の製品とも、根本的に異なる存在です。
それは“バランスを取るため”の道具ではなく、
「身体に備わる本来の感覚」を呼び覚ますために生まれた、精密な再統合装置だからです。
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1. 機能ではなく、“構造原理”が違う
ippon blade®︎の歯は、ただ中央に配置されているのではなく、距骨を含む足根骨の中心に正確に対応するよう設計されています。
これは、人体が重力とどのように調和して立ち、動き、感知するかという、“構造的真理”に基づいたものです。
他の模倣品や類似下駄は、見た目や高さに着目して作られていても、「軸線」「床反力」「足趾との関係」「距骨ライン」などを含めた全体の重力設計思想は反映されていません。
ippon blade®︎は、足裏からの情報を正確に通すために、素材、歯の位置・角度・長さ・形状のすべてを調整し、“重力との関係性そのもの”を身体に映し出す構造を持っています。
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2. 感覚を「教えられる」のではなく、「自分で気づく」
他の一本歯下駄が「使いこなす道具」であるのに対し、ippon blade®︎は、「使われることで自分に気づく体験装置」です。
マニュアルがなくても、履いた瞬間に身体は反応を始め、感覚の会話が始まります。
・どこに立てば安定するのか
・どこを緩めれば動きやすいのか
・呼吸と連動する動きはどこにあるのか
それは、誰かに教わるのではなく、身体が自分自身に教えてくれるのです。
ippon blade®︎の本質とは、この「感覚との対話」を再び起こす構造と思想にあります。
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3. 身体の記憶が、社会の未来をつくる
ippon blade®︎が促しているのは、「自分を整えることが、社会との調和につながる」という静かな循環です。
これは、筋肉を鍛えるとか、見た目を整えるという目的ではなく、もっと根源的な、人間と生命の原理に基づく行為です。
・自然との共鳴感覚
・自分のリズムを取り戻すこと
・日々の暮らしの中で、感覚を取り戻すこと
こうした身体の記憶こそが、複雑化した時代を生きる私たちにとって、最も大切な“準備”なのです。
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4. 一本の歯が示す、文化の進化
ippon blade®︎は、運動器具でも、宗教具でもありません。
それは、「人間とは何か」「どう生きるか」という問いを、身体から立ち上げるための“文化装置”です。
・科学と自然
・技術と伝統
・意識と無意識
・個と全体
・重力と自由
このすべてを結び直す鍵として、一本の歯が生まれました。
たとえ模倣品が現れても、ippon blade®︎が宿すバランス感覚と設計思想は、「揺らぎを受け入れながら、自分の真ん中で立つ」という実践に支えられているため、容易に模倣されることはありません。
そしてこの姿勢こそが、あらゆる違いを越えて、
「ひとつの命」として生きることへの出発点なのです。
あとがき|多様性の先にある「ひとつの命」へ
私たちは、性別、年齢、人種、言語、文化、能力といった、さまざまな“違い”に囲まれて生きています。
その違いは、個性として称えられることもあれば、ときに対立や分断の原因として浮かび上がることもあります。
しかし、どんな違いを持っていても、私たちは皆、ただ一つの共通項――「重力の下に生きている」という事実を共有しています。
ippon blade®︎は、この“生命としての共通性”を可視化し、体感させる装置です。
たとえ姿や年齢が違っていても、すべての人が重心を持ち、軸を持ち、バランスを保ちながら生きている。
揺れながらも立ち、進もうとするその構造は、
人間という存在の根底にある普遍的なリアリティです。
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この“構造的な共通性”は、言語や文化、思想を越えて、人間と人間を結び直す鍵になり得ます。
ippon blade®︎が広がっていくことで、人と人のあいだにある見えない壁が溶けていき、共に立ち、共に歩くための“共通の基盤”が築かれていく。
身体を通じた理解は、言葉による議論を越え、
根源的な“納得”をもたらしてくれます。
この納得の連鎖こそが、社会の分断を越えて、
共に在る未来の礎になるのだと、私は信じています。
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地球上のあらゆる生命は、それぞれの環境に適応しながら、回転し、循環し、揺らぎながら、独自のバランスを取り続けています。
そしてそこには、常に多様な個性がありながら、
全体としての調和が生まれている。
個が全を支え、全が個を活かす。
それが、生命の原理であり、人間社会が本来目指していた在り方なのではないでしょうか。
ippon blade®︎は、そうした全体調和の感覚を、
足裏から、身体全体へ、そして社会へと伝播させていく“新しい文化の火種”として存在し続けたいと願っています。
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その一歩が、分離された世界を越えて、
再び「ひとつの命」として歩み出すための道しるべとなることを、心から願ってやみません。
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ippon blade®︎ 開発者/プロフィール
小平 天(こだいら たかし)/通称:てんちゃん
1977年7月7日 午前7時、東京生まれ・東京育ち。
現在47歳。
――天の川銀河、天は高し。
天に届くようなスケールの男になれ。
祖父の七番目の孫としてこの世に生を受ける。
西表島では、ネイチャーガイドやマリンショップのインストラクターとして働き、裸足で山々を駆け、大自然に融合する日々を送る。
自然と共に生きる中で、自らの内側にある固定観念や既成概念が崩れ、真我に目覚めはじめる。
2012年末、覚醒体験を迎える。
すべての巡りと繋がり、そこに宿る必然性に深く気づく。
自身に流れる修験者(山伏)の血と魂の天命が静かに目を覚まし始める。
ある晩、UFOの中で多くの宇宙存在に囲まれ、亡き父と再会。
その体験が、運命への確信をもたらす。
2013年末、天命を胸に三度目の東京再出発。
高齢者福祉施設でスポーツトレーナーとして働きながら、裸足や一本歯下駄での登山を始める。
一本歯下駄愛好家を集い、練習会を主宰。マラソン大会にも出場。
2017年4月、奥出雲にて、世界で初めて一本歯下駄で100kmマラソンを完走。
同年、日光の100kmウルトラマラソンに出場中、変性意識状態に入り、いろは坂を駆け上がる最中、自分を中心に旋風が立ち上がる。
その中心から天を見上げると、カラス天狗が団扇を仰ぎ、風を起こしていた。
そのビジョンがきっかけとなり、「天と地をつなぐ一本の歯」をフィボナッチ黄金比の螺旋構造で設計するアイデアが降りてくる。
すぐに、裸足で100kmを走る木工職人・モクエン氏と出会い、オリジナル一本歯下駄の開発が始まる。
2018年、石川県白山市に移住し、鍛錬を重ねる。
白山白川郷100kmウルトラマラソンを一本歯下駄で完走し、ippon blade®︎ 369(miroku)を完成。
同年11月11日に発売。
その後も進化を続け、
・2019年11月11日「ippon blade®︎ 1000(ZEN)」
・2022年2月2日「ippon blade®︎ ∞(MUNI)」を発表。
全国各地を巡りながら、身体操作の指導と販売を続け、シリーズ累計2000本以上を世に送り出している。
現在もマラソン大会出場、講演、執筆など、活動は多岐にわたる。
現在までに一本歯下駄で3度、100kmウルトラマラソンを完走。
2024年11月、天狗信仰が残る静岡・春野町へ移住。
「一本歯から世界を整える」というビジョンのもと、身体と魂の再統合をテーマに、日々の歩みを深めている。